それでは、一度警察に連絡をしますね。
この言葉を聞いて、ドキッとしない人はまずいないでしょう。
やましい事がなくてもドキドキします。
言う方もドキドキします。
我々医師は望むか別として、時に死体を扱う事もあります。
亡くなった方の死体検案です。
死亡確認とは全く違います。
死亡が確認されている方が誰なのか、死亡日時、場所、原因を推測特定する仕事、と考えていただくとイメージしやすいと思います。
火曜サスペンス劇場やドラマみたいですが、必ずしも事件とは関係ありません。
例えば、ご自宅等がイメージしやすいでしょうが、
ケース①「昨日まで元気だったのに、今朝、おじいちゃん起きて来なかったら、見に行くと布団の中で動かなくなってた、急いで救急車を呼んで病院に行くも手遅れだった」
みたいなケースを想定して下さい。
この場合、場所はわかりますが、このままでは時刻、原因は分からないです。
そこで、死体検案を行います。
今回のポイントは2つ
①一般の方に認知してもらう
②医療従事者に正しく診療してもらう
この2点の為に、二部構成にして記事にします。まずは、前編一般の方向けです。
冒頭の言葉
それでは、一度警察に連絡をしますね。
を聞いても驚かないようになる為に、少し知っておいてもらう必要があると思います。
ここでは、異状死というものに関しての理解が必要です。
既になんだそれ、です。
異状死とは、
①外因死:交通事故、転倒転落、溺水、火災、窒息、中毒
②自殺
③他殺
④死因が明らかではないもの
⑤診療行為に関連した予期しない死亡:入院中の入院病名とは異なる急変
のいずれかを満たす状況です。
ざっくり言えば、
通院中の病気により亡くなった場合以外は全て異状死になります。
このような方を診察した際には、医師は異状死として、警察に届出が必要になります。
医師法に記載されている為、届出は義務です。
よって、冒頭の言葉になります。
こういうふうに聞くと、ケース①では警察への異状死届出が必要な事が分かります。
だから、警察に連絡を入れます。
多くが、まず検視という、警察(検視官)の介入が行われます。
これは先に事件性なども含めて、現場確認をしないと犯罪を見落としてしまう可能性があるからです。
ご自宅に警察官が来たり、亡くなられた後も全身の写真を撮影する為に、全裸にして様々な角度から写真も撮影します。およそ2時間はかかります。可能ならば薬物検査なども行います。
検視が終わると、検案の出番です。
死体検案は、基本的に日時、原因にフォーカスを当てて考えます。場所は日時である程度決まるからです。実際には個人の識別もありますが、そこまで必要なものは割愛させていただきます。
僕も仕事2-3週間ぐらいの死体検案をした事がありますが、かなり腐敗しており一般的に医師に個人識別などできないので、プロにお任せになります。
日時の推定には、体温、死後硬直なんて言葉はドラマレベルでも耳にします。
体温は亡くなってから徐々に環境温に近づきます。この下がり具合で判断します。
死後硬直は人が亡くなると徐々に体が硬くなるため、どの部位がどの程度硬いかで、亡くなった時間を推測する方法です。
原因の推定には、見た目の所見、画像所見が大事になります。これは窒息を疑う、とか。これは中毒を疑う、とか。そういう所見があります。また、亡くなった後の死後CT検査、Aiというものがあります。実は頭の中で出血していた、等が分かったりします。
これらを評価するのが死体検案です。
恐らく医師にしか細かい内容は意味が無いとおもわれますので、具体的な内容は後日の後編のPDFを参照ください。
ケース②
「肺癌終末期のおじいちゃんが、訪問診療の先生に診てもらっていたが、そろそろかもと言われていた。今朝自宅のベッドで亡くなっていたところを発見された。」
これは、もちろん異状死ではありません。
自宅で最期の時間を過ごせてよかったなぁ、と思うケースです。
我々がたまに出会うのが、病院嫌いで病院に全く行かない方の自宅で亡くなっていたケースです。これはどんなに犯罪が関与していなさそうでも、異状死に当たります。
残念ながら、様々な写真や評価を要します。ご遺族の元にご遺体をお返しするのもかなり後になります。
知っておいて欲しい事
①亡くなった状況次第では
異状死として警察に届出が必要
②かかりつけ医を作り、普段の状況を確認しておく
この2点を知っていただけたら、僕は満足です。